開張 (かいちょう)
 標本の状態での左前翅と右前翅の翅頂から翅頂の差し渡し。展翅のやりかたによっては変わってしまうが、図鑑などはほとんどこの開張表記である。当サイトもこれを用いて表記しています。


前翅長 (ぜんしちょう)
 翅の根本から翅頂までの長さ。正確な大きさを示すにはこれがよいでしょう。






亜種(あしゅ)
種を更に細分化する分類単位。正確な定義はありませんが、通常は地域変異を指すことが多いです。蛾では本土亜種・北海道亜種・九州亜種・琉球亜種・奄美亜種・八重山亜種・伊豆諸島亜種・小笠原亜種・屋久島亜種・対馬亜種などなどほかにも様々な亜種分けされている種があります。


同定(どうてい)
蛾に限らず、その生き物がなんであるかを調べ、種を決定する事を同定といいます。同定するにあたって重要なのが、採集日・採集地・時間・大きさ・止まり方・周囲の環境・翅の斑紋など様々な事から絞って判断します。斑紋だけで同定可能な種もいれば、解剖して交尾器を検しないと分からない種もあります。似ているが出現する季節が違うものや、大きさが違うものもいます。すべての蛾が日本のすべての場所にいるわけではありませんから、その地域や標高などによっても同定の判断基準になります。また、幼虫の食草が周囲にあるか無いかも重要だったりします。たとえば翅がボロボロになってしまった蛾などを同定する場合など、そういった様々な事から絞っていくことが重要になってきたりします。

成虫・幼虫の同定に不可欠な翅の斑紋や、幼虫の形態の各部位の名称など詳しくは下記リンクからどうぞ。

成虫同定の初歩

幼虫同定の初歩


展翅(てんし)
 翅を広げて標本にすること。蛾の場合は胸部の中心に昆虫針を刺し、翅の形を整えて、展翅テープで押さえて展翅板に展翅する。翅の上げ具合は蛾によって様々。この状態で乾燥させたら標本の完成です。


[展翅中の標本]


翅の上げ具合ですが、基本的には前翅後縁が水平になるように上げます。ですが種によっては水平よりも少し上に上げるほうが綺麗に見えます。しかしこれは結局その人が一番美しいと思った角度で決まるので、「この種はこれが正しい角度です」というのはありません。
[種と作者によって違う翅の上げる角度 : 蛾LOVEの場合]



下唇鬚 (かしんしゅ)
蛾の頭部にある「鼻」のように見える部分。通常3節からなり、根元から第1節、第2節、第3節となります。主に小蛾でよく発達してますが、大型の蛾でもアツバ亜科やクルマアツバ亜科などの蛾もよく発達し、特にテングアツバなど例外的に発達するものもいます。キバガ科などの蛾の「キバ」の部分も下唇鬚です。この特徴は種の同定にも役に立つことがあります。この器官は触角同様に匂いを感じ取ることができたり、複眼を掃除する役目にもなっているようです。

 
[テングアツバの下唇鬚]

みんなで作る日本産蛾類図鑑「テングアツバ」




[様々な蛾の下唇鬚]


下唇鬚はもちろん蝶にもあり、蛾がテングアツバなら蝶はテングチョウが有名ですね。様々な蝶からも下唇鬚は観察できます。

 
[テングチョウの下唇鬚]




[様々な蝶の下唇鬚]



口吻(こうふん)
吸収管または吸管と呼び、長いストロー状をなし、普段は頭部の下面に巻き込まれています。花の蜜や樹液など液体の食物を吸うのに特化していて、殆ど全ての鱗翅目の仲間がその形状をしています。口吻の長短は種によって様々で、スズメガ科などの蛾は特に発達しており、体長の数倍に達する。ヤママユガ科の蛾などに代表される、蛾では幼虫時のみ食事をし成虫では食物を摂取しないものも多くなく、成虫では口吻が退化しているものがいます。その場合は小さな突起となって痕跡をとどめているにすぎません。

 
ホウジャクの仲間はハチドリのように空中をホバリングしながら花の蜜を吸います。




糖蜜採集で集まった蛾たちは口吻を伸ばし、木に塗られた蜜を吸います。



触角(しょっかく)

擬態(ぎたい)
1:隠蔽

2:ミューラー型

3:ベイツ型


成虫越冬(せいちゅうえっとう)

個体変異(こたいへんい)
1:黒化型

1:異常型

2:地域変異

3:季節変異


シノニム(Synonym)同物異名
同じ蛾に2つ以上の学名が付いている事。別種だと思われていたものが後に研究の結果同じ種類であったことが判明したときや、別々の人がそれぞれ一つの種に名前をつけたとき、すでに記載されいる事を知らずにまた記載されたとき、などに起こります。たとえば以前はユウマダラエダシャクとホソユウマダラエダシャクという2種の蛾がいましたが、現在では研究の結果同種とされ、ホソユウマダラエダシャクは無くなりました。この場合、ユウマダラエダシャクとホソユウマダラエダシャクはシノニムという事になります。
恐竜でいう、アパトサウスルとブロントサウルスが有名な話で現在はブロントサウルスは無くなりましたね。

しかし動植物界において和名の場合は異名となって同じ種に複数の名前がつけられているものがあります。たとえばズワイガニとマツバガニは同じ生き物です。釣りをする方は知っているかもしれませんがクロダイをチヌと言ったり、メジナをグレと言ったりしますね。地方で呼び名が変わるものもありますし、出世魚なんかは厳密に言えばシノニムでしょうね。和名の場合は整理するのが大変です。。。



ホモニム(Homonym)異物同名
異なるグループの蛾に同じ学名が付いていること。蛾類は種類数が多いため、新種を記載するときに、知らず知らずのうちに同じ名前を使用してしまう事があります。この場合先取権の原理に従って最初につけられたほうが有効になります。

しかし、動物と植物、動物と細菌など学問領域が異なれば同名が許されます。たとえば「Pieris」 はモンシロチョウとアセビに共通する学名で許されています。Pieris というのは、ギリシャ神話に出てくるムーサ(人間の知的活動を司る女神)の別名だそうです。

標準和名の場合はよくあります。たとえば「ホトトギス」という和名は鳥と植物に使用されています。が、ホトトギスガイという貝もいます。「ミミズク」というとフクロウを思い浮かべますが、ミミズクという昆虫がいます。「ヒイラギ」という植物がありますがヒイラギという魚もいます。「ヤマトシジミ」という蝶がいますがヤマトシジミという貝があります。このようにカタカナ表記ではどっちがどっちなのか分からなくなってしまうものがありますね。



成虫越冬(せいちゅうえっとう)