Ectropis属
主に春から夏に出現するエダシャク亜科の蛾で、世界的には多くの種が属するが、2011年現在日本では6種を産する。しかし現状異質なものが多く含まれており、今後も研究により種の増減があるかもしれない。実際、大図鑑(井上1982)から標準図鑑(岸田2011)までに1種増えている。ここでは鹿児島以南に産するウルマトビスジエダシャク以外の5種の比較をする。


オオトビスジエダシャク(cat.2792)(1-019-23〜26)
一般に1化の個体は2化の個体より大きく、♀は♂よりも大きい。開張♂28mm〜40mm、♀40mm〜50mm。ウストビスジエダシャクに似るが、各横線・斑紋は黒くウストビスジのように赤みを帯びない。内横線はあまり発達しない事が多いが、内横線が現れる場合は大きく外方に湾曲する。翅の中央付近で丸い黒紋が出るのが特徴。外横線外側の帯は発達しない。

ウストビスジエダシャク(cat.2793)(1-019-21,22)
開張♂28mm〜38mm、♀40mm〜46mm。オオトビスジエダシャクに酷似するが、翅の斑紋や各横線は赤みを帯びる。内横線は前種よりよく発達し、ほぼ一直線に走る。前種同様、翅の中央付近で丸い紋が出るが赤みを帯びる。外横線外側の帯は薄い。


フトフタオビエダシャク(cat.2790) (1-020-1〜6)
開張♂27mm〜36mm、♀31mm〜42mm。平地にも山地にも産する普通種。やはり4月〜9月に発生し、食草もヤナギ、クスノキ、マメ、ミカン、トウダイグサ、ツバキ、ツツジ、ミズキなどにつき、多食性である。DNAにより(ミトコンドリアDNAの塩基配列による分子系統解析)、スギノキエダシャクと分かれた。外横線は中央付近から内側に大きく湾曲する事が多く、以下2種との比較点になる。外横線中央付近での紋はM字状で前2種のようにあまり丸くならない。外横線外側に褐色の帯を成す。4つ目に図示したように亜外縁線を残し黒化する個体もしばしば採れ、別種のような印象を受けるが現状フトフタオビである。一般にスギノキよりも全体に白っぽい。

スギノキエダシャク(cat.----) (1-020-7〜10)
開張♂24mm〜38mm、♀32mm〜38mm。フトフタオビの幼虫に針葉樹食いとそうでない2型が存在する事は1980年代から知られていたが、交尾器による明確な差が見いだせないでいた。前種の項で述べたようにDNAを調べることにより、別種扱いとなった。成虫外見では前種より黒っぽく、外横線も前種ほど曲がらない事が多く、後翅外横線もより直線的。フトフタオビの黒っぽい個体は本種の誤同定の可能性が高い。現状本州、四国に記録があるが、スギ林の調査や過去の標本など調べれば分布は拡大するものと思われる。日本固有種。

ウスジロエダシャク(cat.2791)(1-020-11〜16)
開張♂21mm〜30mm、♀28mm〜33mm。一般に前4種よりも小型で、前・後翅ともに外横線は直線的に走る。翅の中央付近の紋は強いM字を表す事が多い。
特徴と比較ポイント
[オオトビスジエダシャクとウストビスジエダシャク]

ポインタで画像に触れて下さい。
- まず緑矢印で示した翅の中央付近に丸い紋が出てたらこの2種を疑う。
- 翅の斑紋や各横線はオオトビスジでは黒いが、ウストビスジではやや褐色である。
- 赤で示した内横線はオオトビスジでは前縁だけに現れる場合が多く、出ても薄く、やや屈曲するがウストビスジでは明瞭に現れる個体が多く、直線的である。
[フトフタオビエダシャクとスギノキエダシャクとウスジロエダシャク]

ポインタで画像に触れて下さい。
- フトフタオビは全体に白っぽい個体が多い事で、黒っぽいスギノキと比較される。ウスジロも白っぽいが小さいことで区別できる。
- 青で示した翅の中央付近の紋は丸くならず、M字をなす。スギノキではこれを欠く個体が多い。ウスジロは小型だが、この斑紋は前2種と同じくらいの大きさがあるので目立つ。
- ピンクで示した外横線の屈曲は、フトフタオビでは変異があり多くの個体は強く曲がる。スギノキ・ウスジロでは屈曲が弱く直線的な個体が多い。
- ピンクで示した外横線に沿って外側には褐色のオビが走るが、スギノキでは翅の色に溶け込んで確認しづらい個体がある。
- 黄色で示した後翅外横線はフトフタオビでは強く屈曲するが、スギノキ・ウスジロでは直線的である。
生態比較

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