2008年4月28-5月5 タイ北部撮影・採集遠征
中尾健一郎
昨年秋から中国の標本商Dr.Liから購入した、蛾・蝶の展翅標本作製に追われていたが、蛾の標本の質の低さに嫌気がさし、そろそろまた、海外遠征したくなった。今回は、標本も採集したくなり、行く先を検討。本当は中国に行きたいのだが、当面難しそうで、フライ乗り継ぎ少なく簡単に行けそうな場所としてChieng Mai周辺に決定。ここは私と同じく昆虫生態画像のサイトを立ち上げているJohn Mooreさんのホームグランド
http://www.thaibugs.com/thaibugs.htm
彼にポイントを教えてくれるようメイルするとその日のうちに丁寧な返信あり。Chiang Maiの近くにも車で簡単にアクセスできるポイントがあるらしい。
最もお勧めはミャンマー国境近くのDoi AngKhang Resort、ここはChiang Maiから100km程度。早速フライト、レンタカーそれに到着日のホテルをネットで予約。

今回のライトトラップ用機材:100Wクリアー水銀灯1灯、安定器、20W誘蛾灯2本、40W電球型昼白色蛍光灯、180W車用DC/ACコンバータ、330W220→100V変圧トランス(今回は大活躍)、折りたたみ鋸、はさみ、麻紐(緑布セット用)

撮影機材:Canon Kiss DigitalX, 60mm F2.8 Macro, 50-200mm F5.6 ズーム+リアコンバータまたは接写リング(蝶の望遠接写用)、リングストロボ、Compact Flash 計9GB。前回と同じくパソコン、フォトストレージ持参せず。

採集用機材:今回は捕虫網、酢酸エチル殺虫管も用意、さらに糖蜜用スプレーも

以上の重量24kg、前回よりさらに重たくかさばるので、大型スーツケース使用
日時 場所
4/28 成田発 朝10時のタイ航空でバンコックへ。2時間半程度の乗継時間で夕方6時にチェンマイ着。タイ2番目の都市のためか乗客は多く、機体もB777。空港からのタクシーは中の予約カウンターで手続きする必要あるのを知らなかったため、荷物を転がして、再度セキュリティーを通るはめになった。ほかの町と違い流しのタクシーはいないらしい。チェックイン後、町へ買い物のため外出。夜もにぎやかで、スーパーマーケットでトラップ用のカニ、エビ、バナナを買い込む。
4/29 R1252 Chae Son NP
地点A
空港でレンタカーのカローラをピックアップ。郊外のスーパーマーケットで食料品、水を買い込み、まず、Mr.Mooreお勧めのR1252へ。車は右ハンドルで日本と同じ、運転は楽。ただ、道路標識は殆どタイ語、僅かに大きな交差点にある英語表記を頼りにして移動するが、数回、道に迷う。Chieng Raiと結ぶR118に入った後はあまり迷わず、無事、R1252との分岐点を発見。R1252はかなり急な登りでどんどん標高が上がる。周囲の森はMr.Mooreの勧める通り、自然林に近い二次林。
谷間のネムノキに似た高木の白い花にキシタアゲハやその他アゲハ類が群がっており、大型のマダラガの姿も見えるが、全く手が届かない。ただ、キシタアゲハは時々、雌雄のペアで下に下りてくる。沢沿いの道に、エビ、カニ、バナナトラップをセットして、虫の飛来を待つが結局何も来ない。
夕方から雨が降り出したため、道路脇の屋根付きの案内板に「緑布」をセット。車のシガーライターソケットを電源にして誘蛾灯と電球型蛍光灯を点灯。直ぐに大量の甲虫類が飛来、日本のオオセマダラコガネ、ビロードコガネに似たコガネムシ類が多い。蛾の飛来は8時過ぎたころから多くなった。
風景
キシタアゲハの飛び回る木の下に駐車 エビのトラップ、2時間後でも何にも飛んでこない
甲虫
てっきりヨナグニサン Actias atlasだと思っていたら、前翅に白色横線がハッキリと走っており、Archaeoattacus edwardsii ヒトリガ科のAreas galactina、派手だけど普通種で、どこでも点灯後最初に飛んでくるのはこの蛾
同じくヒトリガ科のArgina argusこれは今回のタイで初めて出会った蛾、 大きなコケガ、Macrobrochis sp
これはヒトリガではなく、ヤガのTinolius eburneigutta 最初出会った時は感激したPlutodes属のエダシャク、これはP. flavescensかな?
その他蛾
4/30 Sri Lanna NP, Phrao
地点B
5/1にはDoi AngKhangでの採集を予定しているので、本日はその中間地点での採集・撮影。昨日と同じく、時々強い雨が降る。Phangへの山越えの道の途中にバイク用の東屋があったので、ここで夜間採集することにする。周囲は林が切り開かれて多少開けた場所。アジア熱帯に多い、株状の竹の林が周囲に多い。東屋の周囲の花にはシロチョウ、シジミ、セセリが飛び回っている。
風景、
車の向こうにある東屋が夜間採集の「緑布」を張った場所。 30分程度の時間をかけて「緑布」の完成。天井から誘蛾灯と蛍光灯をつりさげた。
他の虫
これはヤガ科のBrana cara.せっかくの後翅のピンクを撮影したくて時間をかけて粘った一枚 とにかく東南アジアにはPhalera属のシャチホコの種がやたらにいますが、これは中型のP. cossoides
タイにはCallambulyxが5種分布することになっていますが、これがCallambulyx rubricosaだとすると これは前翅の斑紋が異なるのでCallambulyx sp
その他蛾
5/1 Doi AngKhang Resort
地点C
Fangの町に出て、Doi AngKhangへの入り口英語表示を見つける。ガソリンを満タンにして出発。1km程度入ったところで道を失う。タイ語の表示だけになり、どうしようもない。山の方角を目指して、道を探す。やっとまた英語表示があって、どうにか安心。1000mを越えるあたりになると樹林の雰囲気は九州の低地の照葉樹林になる。Doi Angkhangへの三叉路には軍の検問所あり。尾根からしばらく下ったところに、Doi AngKhangの集落がある。ここには標高い気候を使ったタイ王室設立の果樹園があり、リンゴ、ナシ、ブドウなども植えられているらしい、時間が無く果樹園には入らず。宿泊施設のDoi AngKhang Resortは少し山を上がった、集落の入り口近くにある。Chiang Maiのホテルチェーンが経営しており、立派な施設。お値段も2000バーツとなかなか。借りたロッジの見晴しは悪くはないが、この種の施設は夜間にかなりの照明が点灯されることが多く、ベランダに水銀灯を点灯し、車で移動して夜間採集は尾根にあるView Point(見晴らし台)で行うこととした。これは正解で、この場所での採集を終わりロッジに戻ったが、ベランダの水銀灯に来ていた蛾の数は期待外れ。
風景
王立果樹園への入り口 Doi AngKhang Resort のロッジからの眺め 宿泊したロッジを下から見たところ、構造はベランダ採集に理想的
他の虫
今回の最大の収穫、タイ未記録と思われるCloriana属の巨大アケビコノハ類 タイのオビガ科の満足な図鑑は無さそうですが、よく見るとかなりの種類数がいるようです.
前翅の内横線が丸いので
Craspedortha montanaにしました
中国雲南省とタイ北部だけにいる稀種
こちらは普通種のCraspedortha porphyria
その他蛾
5/2 Doi AngKhang
地点D
前日の場所から尾根道をChiang Daoへ1km程度南に移動した場所、View Piointより見晴らし良く樹林を見下ろす理想的な場所.ただし、足元が赤い粘土で終わった時には靴も車も赤い泥だらけ.
風景、
他の虫
黒いウンモンスズメといった感じのAnambulyx elwesi Attatha ragalis,昔、マレーシアでBaorisa hieroglyphicaを採集時と同じ感動がありました 後翅の赤と、前翅の緑が思いっきり毒々しいRhodoprasina callantha
その他蛾
5/3 Chiang Dao Hill Resort
地点E
FangとChiang Daoの中間あたりにあるResort, 平地の熱帯林の採集には理想的な場所.施設内にはチークなどの巨木が生い茂る.ただし、この日、宿泊客は私1人、まもなく経営行き詰まること確実、ここでは雨を避けて、ベランダの下で灯火採集、R. callanthaが飽きるほど飛来.
風景、
付近はこんな石灰岩の岩山 麻薬の検問に引っかかったところ
他の虫
5/4 Chiang Mai 夜のフライトだったので、Chiang Daoをゆっくり出発して、MaeRimからR1096を山越えして南からChiang Maiに帰りました.Mr. Moore お勧めのMae sa valleyなども夜間採集には絶好の場所だが、National Parkのレンジャーの監視が厳しいらしいです.
風景
5/5 成田着
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