2010年8月5-12 ラオス遠征  (藤平、中尾)
今回の夜間採集用機材:ガイドのKhaambounさんが発電機、200W水銀灯1灯を用意してあるので、白布だけ持参すればよかったのだが、、万一備えて中尾も20W誘蛾灯1本、320W車用DC/ACコンバータ、40W220→100V変圧トランスを持参。結局、誘蛾灯はほとんど使わず。
撮影機材:デジカメ、パナソニックLumix DMC-G1:標準ズームレンズ14-42mm/F2.5-5.6, マクロレンズLEICA DG MACRO 45mm/F2.8、外付けパナソニックストロボP28、新たにサンパックのリングストロボauto16Rを用意。
採集用機材:前回と同じく、六本脚で売っていたプラスチック殺虫管、酢酸エチル160ml程度、大型蛾用のアンモニア水と注射筒。
藤平氏も今回はライトトラップ用具は持参せず。おかげで二人合わせても荷物の重量は35kg程度で身軽。
日時場所 画像とコメント
8/5
成田からビエンチャン
9:00amに成田第2ターミナルタイ航空カウンター前で待ち合わせ。スターアライアンスゴールドカードの威力でビジネスクラスカウンターでゆったりとチェックイン、ついでにラウンジで一休み。夏休み海外旅行客が多く、タイ航空747のエコノミーはほぼ満席。バンコク、スワナムーブ空港でもラウンジで飲み食いした後、ビエンチャン行きの便に乗り換え。バンコクまでの便と違い、日本人は殆どいない。夜9時過ぎビエンチャン空港に到着。私は4万円を現地通貨KIPに両替、1\=100KIPなので「分厚い札束」3800000KIPを受け取る。出口でKhamboun氏が出迎え。写真と同じ実直な感じ。彼の車であるジーゼルのエスティマでホテルへ向かう。ロビーで明日からの予定を打ち合わせ。ラオス北部での採集を希望していたのだが、とりあえず彼が進める中部で3日間採集することとする。
8/6
Khoun Kham
A地点
朝8:00にKhamboun氏がピックアップ、受け取った名刺によると、彼はLaos国立大学社会科学科の客員教授。常勤ではないらしいのでガイドのアルバイトも可なのかもしれない。東に向かって移動。ガイドブックによると車の移動時間で5時間、約250km東南の町が目的地。一般国道だが、有料。一応完全舗装でスラウェシよりは道路状態良好。12時過ぎに採集地として紹介されたKhoun Kham手前の展望台View Pointに到着。立派な東屋があり、眼下に石灰岩台地の自然林を見下ろす大場所。Khoun Khamの宿にチェックインした後、早速、展望台に戻って昼間の採集。吹き上げ採集にも良さそうな場所で、色々な蝶が飛来する。クサギの様な花にキシタアゲハなどが多数集まる。トラガ、ホウジャク類も時々飛んでいるので2人で粘るが採集はできない。
バンコックにタイ航空747で到着 今回のガイドMr.Khamboun Khoun Kham西の展望台東屋 スカシバトラップをセットする藤平氏 展望台から石灰岩台地を見下ろす Khoun Khamの宿、部屋は2階の隅
夕方から激しい雨。東屋の軒下に、中尾持参の白布をセット。暗くなっても雨は止まない。しかし、点灯後、多数の蛾が飛来。大場所のため、スズメガ、中大型種のヒトリモドキ類、オオルリオビクチバなどのクチバ類が多い。水銀灯の周りは蛾が多すぎで撮影は困難になったので、私は主に白布の裏側で撮影・採集。標高が600m程度の為か、蛾のパターンはマレー半島に類似。12:15に消灯。結局、藤平氏期待のアマミキシタバは飛来せず。
最初に飛来したシャチホコTarsolepis malayana スズメガの最初はCallambulyx rubricosa タイにも分布するPsimada quadripennis近似種 イラガの初顔 Parasa darma Dysphaniaのどれか
8/7 Khoun Kham 朝、同じレストランで朝食。Steam Riceたのむと、インディカ米のもち米、なかなか旨いが、量がありすぎ。窓の外見ると、集落の中なのに、キシタアゲハ、トラガが飛んでいる。本日はKhoun Khamの東にあるもう1つの展望台で採集することにする。集落に近く、さらに標高低いので、昼蛾が飛ぶ雰囲気は無い。点灯後、蛾の飛来数は、雨も降らないためか昨晩に比べ少ない。同じく、12:15消灯。宿の窓外に誘蛾灯を吊るしたのだが、街中で明かりも多いので殆ど蛾は集まらず。
毎日殆ど3食食べていたレストラン英語メニューあり 美しいが常連のYepcalphis dilectissima DesmobathrinaeのCelerena sp 腹部が真っ赤なカノコガ、タイでは見なかった 展望台からの眺め、見晴らしは良い 展望台の東屋と、我々のエスティマ
東南アジア広分布種Iontha umbrina これはキシタヒトリモドキではなく、Asota plaginota 体長20cm近い巨大クツワムシ? コケガのようなパターンのイラガ? Tambaの新顔 これでもシャチホコ、タイにも分布するParacyphanta kurokoi
8/8
Nam Phao

B地点
Khamboun氏が、すばらしい自然林があると薦めるので、ベトナム国境に近い、Nam Phaoに向けて移動。途中のLak Xaoの町手前までは左手に1500m程度の石灰岩の岩山が迫る。Lak Xaoから5km程度の場所にあるHot Spring(温泉)が本日の宿。ただ、部屋には窓も、エアコンも無く、昨日の宿とはかなりの差。温泉といっても別棟に浴槽付の浴室があるだけで、温泉の雰囲気は無い。コックをひねってもぬるい水が出るだけ。後で、温泉に入るには源泉からポンプでタンクにくみ上げる必要あること知る。宿の庭、裏の河原には給水する蝶が多く、スソビキアゲハ、フタオチョウなども飛んでいる。Nam Phaoのベトナム国境まで行くと、川の両側に自然林が広がるのだが、Khoun Kham周辺と比べそれほどすばらしいとも思えない。雨を避ける為、小屋を見つけてナイターやったが、雨が無く乾燥気味で見晴らしも良くない為、蛾の飛来数は少ない。諦めて、11:00頃に早上がり。
立派なベトナム国境 小屋の柱には何故かウシの頭蓋骨 この夜ナイターやった小屋 温泉のある宿、お勧めしないが選択肢無し ドクガの様なノメイガ? 黒帯のはっきりしたコブガ
リンガ不明種 タイにいないコケガ Platyjionia mediorufa
赤くない型もいるようです。
真っ赤なノメイガ こっちがPsimada quadripennisと思います
8/9
Hot Spring周辺
昼間、宿近くで昼の蛾採集を試みる。携帯電話送信塔のある小さな岡に向かうと、道沿いの花や葉上に蝶やその他の虫が多数目に付く。昼蛾はトラガ類、黄色い帯のあるホタルガなどのマダラガ類が時々岡の鞍部に飛ぶ。道脇の竹にはでかいヤシオサゾウムシが多数。道の行き止まり部分の開けた場所ではフタオチョウ類、シジミチョウ類、林の中に入るとコイナズマが多い。この当たり、屋根を葺いた小さな構造物あり、どうやら風葬の棺おけを覆うもののよう。ようするにこのあたりは集落の墓場。藤平氏のスカシバトラップは外れ、昼蛾で採集したものはクロトラガScrobigera albomarginata、ホタルガPidorus truncatus、マダラガChalcosia argentata、結局採集できなかったのはトラガEpisteme adulatrix 。
宿の横にある温泉、右のタンクに汲み上げ 昼蛾が飛ぶ丘の峠 藤平氏二度目のスカシバトラップ挑戦 風葬の覆いがあちこちに 樹の白い花に蝶が群がる 新しい倒木にはカミキリやタマムシ
ヤシオサゾウムシのペアー竹の若芽にいっぱいたかっている 大型のサシガメが多数飛んでいる、これに指先さされて痛かった 宿の庭に飛んでいたアタマスコフタオ クロトラガScrobigera albomarginata飛んでいるとマダラチョウ似 マダラガChalcosia argentata
8/9
Nam Phao
本日のナイターは国境近くの屋根の無いオープンな場所で行うことにする。途中、河原に降りてハンミョウを探す。堀さんが採集したという場所。確かに、コニワのような小型ハンミョウが足元からハエのように飛び立つ。国境の食堂で夕食を食べるころから雨が降り出す。白布をセットしたころ一時降り止むがその後また降り始める。だが、熱帯の蛾には雨は必要らしく、飛来数は多い。藤平氏は雨で意欲喪失気味。私の方は雨具かぶって頑張り、12:30頃まで続ける。
川を挟んで樹林に向けて張った白布 小型のスズメガが来るとうれしいもので、これはEupanacra variolosa 後翅が真っ黒な型のオキルリ Elibia dolichus 藤平氏はキャメロンの後2度目の出会い 赤い頭部、腹部が印象的なCalesia dasypterus Samia canningi
ノメイガの新顔、
採集できず
ハグルマケンモン
日本と同種?
ヒメシャクの
変わった斑紋
コケガの新顔
8/10
Khoun Kham

ビエンチャン北部に移動することは諦め、再びKhoun Khamに移動。昼間は集落から森林保護地域のゲートに至る道を歩くことにする。集落から道に入ると直ぐにスソビキアゲハやその他大型アゲハ、シロチョウなどが多数吸水に来ている。その先、素晴らしい熱帯林のトレッキングルートが続く。わざとなのか、小川に橋も無いので、膝まで水に浸かりながら進む。あちこちで吸水に集まる蝶多数。蝶屋さんが始めて熱帯で採集するには良い場所と思われる。
エスプレッソ風のベトナムコーヒー この村にはイタリアンもあり、欧米人多い 若者は暇らしく、朝からビリヤード 自然保護林への入り口のお寺 すばらしいジャングルトレッキング道 待っていると足元に蝶が給水に集まってくる
ハイビスカスの花に
来たツマベニ、
キシタも来る
派手なバッタ、有毒? セセリチョウ、
昼の蝶の撮影は
不得意です
最後の夜だが、最初と同じ、Khoun Kham西の展望台でナイターすることにする。今回の採集場所の中ではベストだが、この日は雨が降らないためか乾燥している。予想どおり、残念ながら蛾の数は初日より少ない。明日朝の出発早いので10:15に消灯。
Aventiinaeの新顔 ヒナシャチホコの同属種Micromelalopha vicina これもかわいらしいスズメガCypa decolor 不明蛾、コブガ? 小型シャチホコNotodontella viridinota♂ ギンボシスズメですタイにも分布
フタオガの新顔、小型種 Risoba walshae
ラオスでは未記録?
クロヘリキノメイガ
Goniorhynchus
butyrosus の
近似種
藤平氏、最後のナイターで頑張る
8/11
ビエンチャンへの帰途
帰りのフライトが1:50 pmなので、遅れないよう、6時にKhoun Khamの宿を出発。田舎道だが、信号も渋滞も無いので、途中、朝食を店でとっても、ビエンチャンに11:00頃到着。ショッピングセンターでお土産のコーヒー購入しても楽々空港に12:00頃戻れた。Khamboun氏とはここでお別れ。出国に際して、標本持ち出し規制などの気配は全く無い。
ビエンチャン空港に
無事帰ってきました
8/12
成田
まとめ
バンコック発の夜行便で早朝成田に無事帰還。
ラオスは昆虫採集への規制が当分無いことがメリット。スラウェシ同様、ガイドを使った手軽な海外での蛾採集にチャレンジすること考える方にはお勧めの国。再挑戦するとしたら、2-3月の春蛾を狙うのが興味深いと思う。
Khamboun氏連絡先:Khamboun S.P., Visiting Professor of Tourism Dept, National Univ. of Laos Faculty of Social Sciences
Saphangmeuk Village, Xaythany District, Vientiane Capital, Lao P.D.R.
Tel: (856-21) 771008; Fax (856-20) 5454702; E-mail: Khamboun@hotmail.com
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