2007年4月Borneo撮影遠征
中尾健一郎
日本国内のマクロ蛾の新顔もそろそろ頭打ち、これまでのマレー半島側での採集標本とあわせて、東南アジアの蛾の生態画像のデーターベースを整備するため、とりあえず、Moths of Borneoシリーズにより同定が比較的容易なボルネオに遠征すること計画。当初、4/11日発のフライトチケット予約していたが、仕事の関係上、4/14日発に延期。

今回の機材:

ライトトラップ用:100Wクリアー水銀灯1灯、安定器、20W誘蛾灯2本、40W電球型昼白色蛍光灯、180W車用DC/ACコンバータ、330W220→100V変圧トランス(梅津氏の発電機使用できたため実際には殆ど使用せず)、折りたたみ鋸、大型はさみ、ロープ(緑布セット用)

撮影機材:Canon Kiss DigitalN, 60mm F2.8 Macro, Panasonic 外付けストロボ、Compact Flash 1G3枚、エプソンP-2500フォトストーレジ(今回はノートパソコン持参せず)

採集用機材:糖蜜用スプレーだけその他無し

以上の重量18kg、単独遠征で個人で携行するにはちょっときつい
日時 場所
4/14 成田 13:30 マレーシア航空MH071にチェックイン、今回はUA milageを使わず、HISの格安航空券利用、往復\49000、ただし、Taxその他で総額は\72780。まあ、国内の八重山に行くのと同じ。成田第2ターミナルのMHカウンターのエコノミーは長蛇の列。NHとのコードシェアのだが、スターアライアンスゴールドカードは使えず、諦めておとなしく並ぶことに。殆ど満席。エコノミーだが、シートの液晶テレビシステムは最先端。UAどころか、ANAのビジネスより遥かにまし。食事も満足。
4/14 クアラルンプール 成田からコタキナバルへの直行便もあるが、今回は格安航空券で仕方なく、クアラルンプール乗り継ぎ。19:50頃、予定よりやや遅れて到着。極めて近代的国際線ターミナル。RMに両替後、1\=3.5RM。国内線ターミナルに移動。21:30発で時間もてあますが、スターアライアンスラウンジは終了しているので一般待合席。この時間にしては客が多いなと思ったら、機材はA-330。
4/15 コタキナバル 日が代わって4/15 00:05にコタキナバル着。田舎の小さな空港予想していたら、立派なターミナルビルのある大きな空港。タクシーでMr.Prudenteに予約してもらった、Kinabalu Daya Hotelにチェックイン。一泊150RMの安ホテル。一応、温水シャワー付。
下見 朝食後、9:00にホテルロビーでMr.Prudenteに会う。人当たり良さそうな感じ。彼のライトエースで観光案内所へ行き、Sabah州の地図を入手し、「佐々木さんの発電機があるよ」とのことで彼の自宅へ。起動を確認し、スーパーマーケットで食料品、日用品を購入。キナバル山登山口を通り、まず、マシラウリゾート の下見。公園管理のレンジャー事務所で、公園内での蛾の撮影許可を申し込むと、問題なく許可を取得。明日の宿泊も申し込む。その後、ポーリン温泉へ、遅い昼食をとっていると、激しい雨。結局、この後、毎日、午後から夕方に雨にあうことになった。
サバティーガーデン
600m

A
低地の良いスポット希望とお願いしたのを受けて、Mr.Prudenteが予約してくれたサバティーガーデンに移動。彼が、Virgin Forestに囲まれたいい場所だというので期待したが、ロッジは見晴らしは良いものの、はるか遠くに二次林を見下ろすだけで周囲は全くの茶畑。彼に文句言うわけにもゆかず、ロッジの前に緑布ライトトラップをセット。点灯後、施設内のレストランで二人でゆっくりと食事とり、キナバル山の夕景色など撮影して、ロッジに戻ると、ライトに意外に多数の蛾が飛来している。早速、撮影を始めると、Mr.Prudenteが「私も撮影します」と言って、バッグより取り出したのはNikon D200と60mmマクロ+外付けストロボの完全な接写用のセット、その他のレンズもぞろぞろ。彼の兄がカメラマニアで自分も影響を受けたとか。ボルネオのガイドでも、これだけそろえられる収入あるらしい。大型のアトラスオオカブトの雄雌も飛来したので、彼はそちらに集中。私は、今回は普通種でも何でも手当たり次第に撮影。緑色で後翅の赤いスズメガCallambulyx rubricosa等は絶好の被写体。次々と新顔が現れるが、初日でもあり、Mr.Prudenteも寝てしまったので1時に終了。
周囲の木に糖蜜を噴霧したが、蛾は飛来せず、ゴキブリとハサミムシだけ。
風景、他の虫
4/16 マシラウリゾート
2100m

B
お昼に、Mr.Prudenteと別れ、いよいよ単独行動、ポーリン温泉の周囲を走りまわった後、マシラウへ、ここは標高2100m程度、周囲には素晴らしい自然林が広がる。比較的開けた眺め得られるロッジにチェックインし、外のテラスにライトをセット。ドア外の電灯の周りに昨夜の蛾が残っており、メイガ、コブガの新顔に期待高まる。いよいよ周囲が暗くなると、「がっかり」。全てナトリウム灯なのだが、何しろ数が多すぎ、オレンジの光が周囲に溢れる。蛾の飛来数は伸びず、小さいものばかり。コブガの種類が多いのが印象的。
風景、他の虫
4/17 タンブーナン
600m

C
ゆっくりと10:30にマシラウをチェックアウトし、ラナウを通り、タンプーナンへ、道路沿いは殆ど二次林、熱帯雨林の雰囲気は無い。しかも、人家が途切れない。ようやく、比較的樹高のある二次林の空き地に決定。今回、ポールは持参していないので、周囲から適当な木を切って架台を作り、「緑布」を張る。点灯し直ぐに多数の蛾が集まる。
風景、他の虫
4/18 ラフレシア森林保護区
1800m

D
マシラウで蛾の飛来少なかったため、標高のある場所として、ラフレシア森林保護地を選択。ここはコタキナバルとタンブーナンを結ぶ道路の峠にあたる場所。周囲のピークは2000m以上あるので峠も1800m程度はあるものと思われた。手前のラフレシア保護センターの事務所で担当のおばさんに許可を取ると、ボスが居ないので良くわからないが、撮影するだけだったらどうぞということで、一応、念のため名刺を頂く。峠の送電塔の周囲が開けておりここに決定。自然林を見下ろす良さそうな場所を探すと、その殆どに写真のような白色のプラスチックシートを張った架台が作られている。どう見ても、夜間採集の目的としか思えない。恐らく、峠の周辺の現地人がカブト、クワガタの大型甲虫を採集するためのものだろうと判断。その内の1つの比較的足場の良さそうなものを借用することに決定。シートを外して、緑布を張る。ここは主要道路のためか、とにかく交通量が多い。丸太での輸出は禁止されたので、大型トラックが製材を大量に積んでコタキナバル方向に運んでいる。
ボルネオのラベルでCrocker Rangeとあるのは恐らくこの場所のこと。キナバルに次ぐ有名な採集場所。点灯後、撮影の準備をしている内に、蛾が集まり、ヨナグニサンの姿も。だが、残念ながらその後現れず。
風景、他の虫
4/19 クリアス河湿地帯
0m
E
最後の夜だし、一度は低地の湿地帯での撮影を、ということでクリアス河湿地帯に移動。この周辺のマングローブ林は現在でもテングザルが生息している場所となっている。コタキナバルからの距離は100km程度はある。現地に到着してがっかり、Mr.Prudenteが言っていたように、川岸に林が残るだけの、殆ど耕作地。雨の後、点灯はするが、たいした蛾は来ない。8時には諦め、Crocker Range自然公園の中のケニンガウへ抜ける峠に向かう。
風景、他の虫
クロッカーレンジ保護区
1300m

F
途中のKimanisのロータリーを曲がったあたりで豪雨。半分諦めながら、暗闇を峠に向かう。周囲の状況わからない中、駐車可能な場所を見つけ、雨も止んだので、ライトをセット、既に11時を過ぎており、周りに木も見当たらないので、車に白布を張った取り合えずの状況で点灯。豪雨の中、風もあるのに、どこに居たのかと思う程の蛾が集まり、あたりは蛾で溢れる。特に大型のスズメガが多い。2時間程度、夢中で撮影。車の中で宿泊し、夜が明けると納得。駐車した場所は両側に自然林を見下ろす、峠の鞍部。ボルネオの甲虫吹き上げ採集で有名な場所なのだろう。
風景、他の虫
4/20 コタキナバル お昼にコタキナバルのMr.Prudente宅に無事到着。発電機返却後、シャワーを使わせてもらい、帰国用に衣類の洗濯もお願いする。洗濯してくれたのはMrs. Prudenteではなくインド人のメイドさん。ボルネオでは観光ガイドさんでもメイドさんが雇えるのかと感心。港近くのFood Center で息子さんと一緒に昼食。Prudente宅で一休みの後、夕方17:35のMH2617便に無事チェックイン。
まとめ 標本収集が昆虫コレクションの正道であり、私の今回の画像採集は邪道。ただ、東南アジアのマクロ蛾の標本は国内に既に大量に蓄積しているはずなので、画像の収集だけを目的にした今回の遠征も、意味はあると思う。
意外だったのは、ボルネオだったら、Moths of Borneoシリーズで殆ど対応可能だろうと期待したのに、どう見ても、未収載の種が多数あること。
問題は、4500枚以上のデータをどの様に処理するかです。
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