2009年11月ボルネオ・マレー半島遠征
藤平暁・中尾健一郎
藤平氏の休暇スケジュールに合わせ、ボルネオ・マレー半島遠征を計画。コタキナバルへのフライトはクアラルンプール乗継となるので帰途3日をマレー半島での採集に当てることにする。今回の目的は、これまでの2回のボルネオ遠征では撮影のみだったこと反省し、Moths of Asia用の採集と展翅標本を作成すること。特に、Moths of Borneoシリーズでまともな画像の無い小型のマクロ蛾の採集に注力すること。

採集機材:二人での遠征であり、ライトトラップ採集道具は分担。100Wクリアー水銀灯2灯と並列接続用安定器は藤平氏にお任せ。私は誘蛾灯2本と、いつもの40W電球型昼白色大型蛍光灯、20W誘蛾灯2本、300W車用DC/ACコンバータ、変圧器。当然、白布、ポールも。
撮影機材:KissDX, +60mm F2.8 Macro, SIGMA 外付けストロボ、コンパクトフラッシュ4G2枚
日時 場所
11/14 成田からクアラルンプール 藤平氏と成田で8:30に落合い、マレーシア航空でクアラルンプールへ。預けた荷物重量二人合わせて54kg、マレーシア航空エコノミークラスの荷物重量制限は一人20kgのため、重量オーバー分追加料金支払うことに。マレーシア入国にはトラブル無し。KLIA(クアラルンプール国際空港)は町から50km程度離れているが、ホテルの明りに蛾の姿は全くなし。
11/15 クアラルンプールから、コタキナバル 10:30 KL発でKotaKinabaluの新しい立派なターミナル着はお昼、空港には佐々木氏より紹介されたガイドのMr.Prudenteが出迎え。案内所で地図入手後、発電機を購入のためあちこち店を回るが日曜で全て閉店。仕方なく、機動しないという佐々木さん達の発電機をトライすることに。これが何と全く快調に始動。Mr.PrudenteのおんぼろライトエースでCrocker Range国立公園へ向かう。峠近くのGnun Alab Resortにチエックイン。この宿のおばさん2人は何とか英語が通じる。一泊1部屋50RM(\1500)食事なしでおまけに電気は5:00-12:00pmだけ。宿の下は素晴らしい自然林だが、ベランダなく、部屋からの夜間採集は不可。小雨降り続くので、宿から少し車で下ったバス停?の東屋に白布とライトをセット。あまり見晴らし良くないので期待はしなかったが、点灯後、雨の中にしてはまあまあの蛾が集まる。スズメガ、大型ヤガは少ないが、ヨナグニサン、前翅に白斑ある黒いオビガMelanothrix nymphaliariaが複数飛来。宿の門限の為、明日からに期待して12:00pmに早々と消灯。
11/16 キナバル山麓 宿を出発し、ラナウ経由でキナバル山登山口を見学。80年代にはこの場所でも採集可能だったとか。天候悪く、山頂は雲の中。採集場所に選択したのはKotaKinabaluへ戻る道を途中でKotaBlueへ向かい少し下った所、標高800m程度の大場所。雨が夜には止むこと期待して白布と「緑布」をセット。流石に見晴らし良い場所であり点灯後に飛来する蛾の数はかなり多い。だが、期待に反して、雨は降りやまず。車のシガーライターを電源に点灯していた「緑布」の誘蛾灯が突然消灯。コンバータを取り替えても点灯せず。諦めて白布の水銀灯に集中。カノコガ類が多数飛来し、喜んで採集と撮影をおこなっていたところ、例のハチに瞼の下を激しく刺される。既に2年前から何度か刺されているので症状は激しく、顔面腫れあがり目も殆ど開けられない状態。雨も降り続くため、蛾の飛来数に反比例して私の戦意は殆ど喪失。大場所のおかげでs昨晩と異なり大型スズメガ飛来多い。赤黒マダラのマドガGlanycus coendersiも飛来したので2時に消灯し、2人で車中泊。
11/17 クロッカーレンジ国立公園アラブ山 朝起きると、眼前にはキナバル山が広がるが山頂は残念ながら見えず。KotaKinabalu市街地を経由して再びCrocker Range, Mt.Alabへ。前夜の雨に懲りたので、雨宿り可能な無難な場所として初日と同じ場所での採集を決定。藤平氏は昼寝、私は腫れあがった顔のまま、宿から、Mt.Alabの山頂への登山道を徒歩で登る。どちらを見ても雨が降らなければ夜間採集には絶好の場所。だが残念なことに山頂近くには公園管理のレンジャー事務所あり。再度のバス停東屋での採集では飛来する蛾の顔ぶれはほぼ同じだが、新顔もあり。そこそこ楽しんで早めに12時前に消灯。宿に戻ると同時に部屋の照明も強制消灯。
11/18 コタキナバルからクアラルンプール コタキナバル発12:15のフライトに間に合うよう、10時前にはMr.Prudente宅に到着。私の顔を見て、病院行きを勧める。同じようにしてハチに刺された佐々木氏は救急車で病院に担ぎ込み点滴治療を受けたとか。職業柄、治療法無いこと知っているのでそのまま空港へ向かう。当然だが、いつもの通り、標本持ち出し何のチェックも無し。メカニカルトラブルとかで離陸は1時間以上遅れ。4時頃KLIA着陸。予約していたHawkレンタカーの事務所を探すが中々見つけられない。何と、事務所は別のビル。この時焦って車を借りる手続きしたのが、大変なトラブルの原因になることに。雨の中、慣れない国の高速道路での運転に不安を漏らす藤平氏にお願いして、私はナビゲーター。KLIAから160km程度車で高速を北上し、Taparのインターへ、キャメロンへの道路表示は丁寧で、全く迷わない。今夜は採集休みと宣言した藤平氏に逆らい、暗い中、大場所と思われる道路脇で誘蛾灯をセットしようとしたところで、この車のシガーライター電源が機能しないことがわかる。藤平氏が直接バッテリーから電源とること試みるがこれも失敗。車の交換を決断して、何と夜の山道、高速を170kmKLIAへ向け戻ることに。流石に途中のSAで仮眠。
11/19 キャメロンハイランド 何とか車を交換して、キャメロンハイランドに到着したのは既に午後3時ごろ、イポーへの途中でベランダ採集可能な宿を探すが、市街地、または耕作地ばかりで好立地の宿なし、しかたなく、タナラータ入口のHelitage Hotelにチェックイン。この日もタナラータの標高では雨と風でまともな採集困難なため、リングレットを越えて戻り、さらに下がった場所で採集することに決定。ここはかなり良好な場所のはずだったが、誘蛾灯2本と大型電球型蛍光灯では力不足で風も出てきたため、期待したほどは蛾が集まらない。12時消灯。
11/20 ブリンチャン山 最後の夜でもあり、午後多少雨が小降りとなったように見えたので、藤平氏を誘って、昔、採集を行ったブリンチャン山に挑戦。標高は2100m程度。山頂には電波送信施設あり。少しそこから下がった鞍部で採集したのだが、当日、正体不明のグループがテント村を設営。東屋も占領されている。送信施設付近での採集試みたが、施設には強力なライトが点灯されることわかり、仕方なく、例の鞍部へ、テントを無視して白布・ライトを設定。残念なことに点灯後風は収まるどころか強くなるばかり。8時半過ぎに撤収を決定。ブリンチャンの先まで降りると雨もおさまってくれた。しかし、付近の集落の明りが障害するためか蛾の飛来は少ない。アケボノマダラヒトリ等の普通種がパラパラ来たところで今回の遠征の採集は終了。諦めて宿に戻る。
11/21 キャメロンからクアラルンプールへ 10:00am頃キャメロン発、天候は相変わらず雨、既に通りなれた道をKLIAへ向かい戻る。タパーに降りる程、樹林の雰囲気は良くなる。途中、高速を降り、ゲンティンハイランドの標識に従い、再び山地を目指す。途中の道路は上に上がるほど整備される、中腹には採集できそうな場所もある。さらに上がって1000mを越えると全くの観光施設の中となる、頂上部は何とビルの中、後で観光案内書を読むとあそこはマレーで人気のカジノ施設とか。道理で駐車場も満杯のはず。ここより、さらにやや北にあるフレーザーヒルがまだまともな夜間採集できそう。空港近くのConcord Innに無事チェックイン。
11/22 KLIAから成田 ビュッフェスタイルの豪華朝食を楽しんだ後、チェックアウト。カウンターで標本入りタッパーを含んだスーツケースをチェックイン、二人の預けた荷物の重量はやや規定をオーバーして44kg、だが、この程度は気にしないのか課徴金なし、まして、蛾の標本など全くのノーチェック。無事日本へ向け出国。
今回の遠征振り返ると、急ぎ過ぎる日程と雨風の悪天候で成果はかなりの不出来。
お付き合い頂いた藤平氏御苦労さまでした。
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